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  • 2018.12.08 Saturday
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ノンフィクション

『世界しあわせ紀行』 エリック・ワイナー

しあわせとは何だろう?
自分はしあわせなのか、どうやったらしあわせになれるのか?
この本は、そうした疑問に明確な答えはくれない。
しあわせの形はひとつではないからだ。

この本は、不幸な国々の不幸なニュースばかり取材するのに飽き飽きしたジャーナリストが、世界でも有数の幸福な(あるいは不幸な)国々を旅して回った記録だ。
訪れるのは有名無名な10ヶ国。
スイスがしあわせな国というのは分かる気がするけど、アイスランドがしあわせってどういうこと?
カタールは有り余る富があるのに不幸で、モルドバは貧し過ぎて不幸。
ブータン、タイ、インドのアジア3ヶ国のしあわせの形は独特で面白い。
あまり外向的とは言い難い(?)著者がしあわせの秘訣を探るべく奮闘する様子は読んでいて楽しい。
人を食ったようなとぼけた文章もいい。
それでいて、時に披露される哲学的な見識はなかなか鋭い。
とはいえ、本書を通読してもしあわせのヒントがつかめればいい方だ。
著者自身、旅を通して明確な答えが得られた訳ではない。
しあわせはつかみどころがなく、考えれば考えるほどに手の平からこぼれ落ちていくようだ。
ある意味で幸せ探しの旅は失敗しているのかもしれない。
それでも本書を読む意味はあると思う。
本書を読み終えた時、日常が、世の中が、少しだけ違って見える。
これはそんな本だ。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
エリック・ワイナ―,Eric Weiner
早川書房
¥ 2,484
(2012-10-24)
コメント:不幸な国々の不幸なニュースばかりにうんざりしたジャーナリストは、世界有数の幸福な国々を旅して回ることにした。幸せの秘訣を見つけるために。

  • 2014.12.21 Sunday
  • 20:50

ノンフィクション

『謎の独立国家 ソマリランド』 高野秀行

カルチャーショックを受けた。本当に。
ショックというより、ぶっ壊されたという感覚だ。
普段、自分が当たり前と思っていた社会や文化の形は、決して当たり前ではない。
その現実を目の前に突き付けられた気分だ。こういう体験は意外な程に少なく、貴重だ。

内戦と海賊で有名なソマリアに平和な独立国があるという。その名をソマリランドという。
独自に内戦を終結後、複数政党制による民主化に移行、普通選挙により大統領選挙を行った民主主義国家である、らしい。
これは表向きの話だけではなく、実際に国内の治安は良く、平和な状態が保たれているという。
果たしてそれが真実なのか、実際に行って確かめるべく行動を起こした筆者の成果が本書である。

ずばり、ノンフィクションとしてもエンターテイメントとしても出色の出来だ。
現地を訪問し、様々な人々に会い話をするうち、次から次へと新たな事実が浮かび上がる。
ソマリランドだけでは飽き足らず、もうひとつの独立国である海賊国家プントランド、未だに内戦の続く戦国南部ソマリアをも訪れる。
そして最後にソマリランドへと帰ってくる。
分断されたソマリアを巡る旅の果てに、著者が辿り着いた真実とは何か。
日本や西欧の常識を超えた平和の形がそこにはあった。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
高野 秀行
本の雑誌社
¥ 2,376
(2013-02-19)
コメント:内戦と海賊で有名なソマリアに平和な独立国があるという。そこにあるのは、日本や西欧の常識を超えた平和の形だった。(ハードカバー)

評価:
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本の雑誌社
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(2014-11-01)
コメント:内戦と海賊で有名なソマリアに平和な独立国があるという。そこにあるのは、日本や西欧の常識を超えた平和の形だった。(キンドル版)

  • 2014.12.07 Sunday
  • 08:02

写真集・写文集

『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』

かつて香港に九龍城と呼ばれるスラムがあった。
無秩序に増築が繰り返されたビル群が折り重なり、ひとつの街を形成していた。
そこは政府の介入を許さない無法地帯で、水道や電気といったインフラは住民達により管理・運営され、自警団が治安を治安維持にあたっていたという。
香港の中国返還の際に九龍城は解体されてしまったが、そこには確かに魔窟と呼ばれたスラムが存在していた。
その実像に迫ったのが本書だ。

本書の大部分は、九龍城の住人達へのインタビューと生活風景を撮った写真からなる。
九龍城には実に様々な人々が住んでいる。
商店主や製麺業者、理容師や医師、牧師や宣教師などと普通の社会に当たり前にいる人々が当たり前にいる。
独特な環境ゆえの問題を抱えてはいるものの、そこに住む人々は決して特別な存在ではないと気付かされる。
かつて魔窟と呼ばれたスラムの実像は、ある意味で意外なものなのだ。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
イースト・プレス
¥ 3,780
(2004-02-21)
コメント:かつて香港には、魔窟と呼ばれたスラムがあった。政府の介入を許さぬ無政府主義社会だ。魔窟・九龍城の意外な実像がここにある。

  • 2014.11.30 Sunday
  • 16:52

オススメ小説

『深夜プラス1』 ギャビン・ライアル

これが冒険小説の傑作でなかったら何なのか。

ルイス・ケインは第二次大戦中にフランスでレジスタンス活動を行っていた経歴を持つビジネス・エージェントだ。
ケインは、オーストリアの実業家マガンハルトを送り届ける仕事を請け負う。
高額な報酬を約束された仕事には当然のように裏があった。
マガンハルトはとある容疑でフランス警察に追われているうえ、彼の会社を狙う人物に命を狙われているのだ。
どうやらその人物は、名のあるガンマンを差し向けてきたようだが――。

というあらすじだけでは本書の魅力はさっぱり伝わらないだろう。
本作を傑作たらしめている要素は幾つかあると思うが、やはりリアリティとディテールに尽きると思う。
ケインや相棒ハーヴェイのプロフェッショナリズム、銃器や車両へのこだわり、戦後のフランスの空気感など、あらゆる点に隙がない。
ディテールの素晴らしさがリアリティを生み出しているといっていいだろう。
 
JUGEMテーマ:読書

 
評価:
ギャビン・ライアル
早川書房
¥ 907
(1976-04)
コメント:これが冒険小説の傑作でなかったら何なのか。熱気をはらんで展開する非情な男の世界がここに。

  • 2014.11.23 Sunday
  • 22:01

サバイバルガイド

『世界のどこでも生き残る 完全サバイバル術』 ナショナルジオグラフィック

ナショナルジオグラフィックといえば、世界の森羅万象を写真と記事で伝える雑誌である。
取材先には秘境や未開の地も多数も含まれている。
そこでは自然環境下におけるサバイバルは必須だ。
長年の活動から得られたノウハウが、ナショナルジオグラフィックには蓄積されている。
その結実が本書である。

という訳で、本書はナショナルジオグラフィックによるサバイバルガイドである。
本書のメインとなるのは、様々な環境におけるサバイバル術だ。
各環境ごとのサバイバル術を、章別にして詳しく解説している。
最初の二章が基礎的な内容の解説。
その後、温帯林、湿地と熱帯雨林、高山、砂漠、極地と亜極圏、水上、自宅、自然災害と章が続く。
更に各環境ごとに、準備や装備、火のおこし方、水を得る方法、シェルターの作り方、食料を得る方法、怪我などの応急処置、危険への対処法、救難信号の送り方、ナビゲーションの方法などが個別に解説されている。
およそ地球上のありとあらゆる環境が想定されている。
また自宅や自然災害の章は、街に暮らす人々にも役立つだろう知恵が詰まっている。

オールカラーで写真や図版が多いのも、見逃せないポイントだ。
読みやすさ、分かりやすさ、に配慮した丁寧な作りだ。
このあたりは、さすがナショナルジオグラフィックらしい作りだ。

あらゆるサバイバル術を網羅した本など存在しないが、本書が実践的サバイバルガイドの良書であることは間違いない。
評価:
マイケル・S・スウィーニー
日経ナショナルジオグラフィック社
¥ 2,592
(2011-08-25)
コメント:ナショナルジオグラフィクによるサバイバルガイドブック。世界中に探検家を派遣してきた実績とノウハウの結実がここにある。(ソフトカバー)

評価:
日経ナショナル ジオグラフィック社
(2014-02-28)
コメント:ナショナルジオグラフィクによるサバイバルガイドブック。世界中に探検家を派遣してきた実績とノウハウの結実がここにある。(キンドル版)

  • 2014.11.16 Sunday
  • 20:32

オススメ小説

『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』 重松清

カイムは不死の男である
自分は何者なのか、なぜ不死なのか、何も分からぬまま千年に渡る放浪を続けてきた。
カイムは練達の戦士であるが、食べたり眠ったりと普通の人間と変わらない。
不死というただ一点を除いて。
老いることはなく、致命傷を負っても再生する肉体。
永遠の命を持つカイムは、限られた命しか持たない人間と共に生きることはできない。
しかし、カイムはそんな人間を慈しみ、羨ましいとさえ思う。
そこには自分にはない命の輝きがあるからだ。

もしも重松清がファンタジーを書いたら?
そんなおよそ有り得ない物語が実現した。
重松氏といえば言わずと知れた直木賞作家で、数多くの作品が映像化されてもいる。
重松氏は現代を舞台にした小説を書かれている作家だが、とあるオファーにより物語はできあがった。
テレビゲーム『ロストオデッセイ』内に挿入する小説の執筆依頼だ。
そうしてできたのが、31編の掌編だ。
それらを一冊にまとめたのが本書である。

重松氏はオファーに際して、ひとつの条件をつけられたという。
「一千年を生きることの哀しみが感じられるようなものにしてほしい」
本書にはまさしく一千年の哀しみが詰まっている。
題材はこれまでとは全く異なるのに、ここには重松氏らしさが確かにある。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
重松 清
講談社
(2007-11-21)
コメント:永遠の放浪を続ける不死の男、カイム。限りある生命を持つ人間を、カイムは羨む。そこには自分にはない命の輝きがあるからだ。(単行本)

評価:
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コメント:永遠の放浪を続ける不死の男、カイム。限りある生命を持つ人間を、カイムは羨む。そこには自分にはない命の輝きがあるからだ。(文庫本)

  • 2014.11.12 Wednesday
  • 20:04

写真集・写文集

『廃墟ディスカバリー』 小林哲郎

廃墟は、なぜこうも魅力的なのだろう。
人のいない風景。
けれど、確かに人々の営みがあったことを示す痕跡の数々。
時を経て、朽ちゆくもの、遺るもの。
自然が持つ力は、見捨てられた建造物達を侵食し解体していくが、その全ては奪えない。

廃墟写真集である。
色彩豊かな廃墟達をぎっちり詰め込み、オールカラーで120ページ強のボリュームだ。
とにかく写真がいい。
明暗や構図が抜群で、写真のひとつひとつに作品性を感じる。
実は、本書と同名のブログがあり、そちらでも著者の撮った廃墟写真が見られる。
だが、紙の写真集は一味違う。
写真を厳選しているというのもあるが、モニターを通して見るのとは違う。
確かな「物」としての実感がある。

贅沢品なのは間違いない。それでも、買う価値はある。
評価:
アスペクト
¥ 2,376
(2008-09)
コメント:廃墟は、なぜこうも魅力的なのだろう。色彩豊かな廃墟達を巡る写真集。第一弾。

評価:
アスペクト
¥ 2,376
(2009-07)
コメント:廃墟は、なぜこうも魅力的なのだろう。色彩豊かな廃墟達を巡る写真集。第二弾。

  • 2014.11.09 Sunday
  • 17:09

オススメ小説

『キノの旅 the Beautiful World』 時雨沢 恵一

何とも形容しがたい不思議な味わいの物語。
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスが旅をする連作短編集だ。

一人と一台が旅をするのは、いつどこかも分からない世界。
この世界には大小様々な国が点在していて、それ以外の広大な土地は無法地帯になっている。
風変わりな社会制度や文化を持つ国々を巡ったり、国の外で出会う人々との交流が主だった内容だ。
(あえて、と思われる)無個性な登場人物達や飾り気のない文章のおかげで、つかみどころがなくふわっとした印象を覚える。
それでいて不条理かつ毒の効いた物語達は、時に残酷で時に温かい。

人を選ぶタイプの小説だけれど、一度ハマれば最高のシリーズになること間違いなし。
先月に発売された最新刊で18巻目。まだまだ続いて欲しいシリーズだ。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
時雨沢 恵一
メディアワークス
(2000-07)
コメント:人間キノと言葉を話す二輪車エルメスが旅をする連作短編集。不条理かつ毒の効いた物語達は、時に残酷で時に温かい。(記念すべき第1巻)

評価:
時雨沢 恵一
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
(2014-10-10)
コメント:人間キノと言葉を話す二輪車エルメスが旅をする連作短編集。不条理かつ毒の効いた物語達は、時に残酷で時に温かい。(待望の最新刊)

  • 2014.11.03 Monday
  • 19:50

オススメ小説

『盗まれた街』 ジャック・フィニィ

街の住人が人ではない何かに、すり替わっていく。
一人、また一人。
隣人は本当に人間だろうか?
自分はまだ人間なのだろうか?

という訳で、ジャック・フィニィ「盗まれた街」をご紹介。
じわじわと侵食されていく恐怖感がたまらないSFホラーの古典である。
アメリカの片田舎を舞台に、静かなる侵食者との対峙を余議なくされた人々の姿を、サスペンスフルに描いている。
侵略ではなく、侵食。それは人間を模倣し、すり替わる。
気付いた時には、もう遅い。家族や友人は、とうにすり替わっているのかもしれない。
誰を信じて、誰を疑うべきか。
果たして人類に未来はあるのだろうか?

古典だから古臭い? いやいや、今読んでも全然面白い。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
ジャック・フィニイ
早川書房
¥ 720
(2007-09-20)
コメント:街の住人が人間ではない何かに、すり替わっていく。一人、また一人。正体不明の侵略者に対して人類に打つ手はあるのか?

  • 2014.10.29 Wednesday
  • 19:05

オススメ小説

『ソー・ザップ!』 稲見一良

狩猟をテーマにした作品の多い稲見氏であるが、その中でも本作は異色だ。
五人の男達が山野を舞台にマンハントを繰り広げる。それだけだ。

物語は「パピヨン」というパブから始まる。
21番テーブルに座る四人の常連客、彼らはいずれもその道の猛者である。
素手の格闘では無敵の元レスラーのベアキル、手裏剣と小太刀の名人ハヤ、大型獣のハンターのブル、元警察の狙撃手の金久木。
彼らの前に現れたのはレッドムーン・シバと名乗る謎の男だ。
レッドは自らの命に三千万円もの賞金をかけ四人に挑戦する。
銃には銃で、刃物には刃物で、素手には素手で、それぞれの流儀で命を賭けた決闘をやろうというのだ。
かくして五人の男達は無人の山野に集い、戦いの火蓋は切って落とされた。

異様な物語だ。
三千万円という大金がかかっているものの、彼らのほとんどはそれに頓着しない。
自身の力量を実戦で試したい。命懸けの男の戦いがしたい。
彼らの動機はそこに尽きる。
結果として相手を殺すことになろうと、あるいは自らの命を落とすことになろうと構わない。
アウトローだとか、ハードボイルドだとか、生半可な言葉では物足りない世界観である。
 
JUGEMテーマ:読書
評価:
稲見 一良
大陸書房
(1989-12)
コメント:初冬の山野に展開する鮮烈な決闘劇。

評価:
稲見 一良
角川書店
(1993-06)
コメント:初冬の山野に展開する鮮烈な決闘劇。

  • 2014.10.26 Sunday
  • 19:42